イヤミスという言葉は、読書好きであれば、一度は聞いたことがあるないでしょうか。
イヤミスを簡単に言うと、読んだあとにイヤ〜な気持ちになるミステリーのこと。
名前のそのままの通りですよね。
後味が悪く、裏切られた気持ちになるのに、なぜか読者は惹きつけられてしまうのです。
今回は、そんなイヤミスのジャンルを得意とし、イヤミスの女王とまで呼ばれている湊かなえさんの作品を深掘りしていきたいと思います。
イヤミスは私も大好物のジャンルなので、個人的に好きな作品もオススメしちゃいますよ!
参考にして頂けたら嬉しいです。
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湊かなえとは
広島県生まれの湊かなえさんは、子供の時から空想好きで江戸川乱歩や赤川次郎の作品を好んで読んでいたそうです。
大学卒業後にアパレルメーカー勤務、青年海外協力隊隊員を経験したのち、家庭科の非常勤講師となりました。
結婚後に小説を書き始め、2008年に『告白』でデビュー。
『告白』の衝撃的な内容は話題性を集め、映画化もされてことで一気に湊かなえさんは有名になりました。
その後も、おもにイヤミスの作品を発表し続け、イヤミスの女王として瞬く間に人気作家になります。
湊かなえのオススメ作品5選
それでは、湊かなえさんのオススメのイヤミス作品を5選ご紹介します。
今回、ご紹介するのは以下の5冊です。
- 『告白』
- 『贖罪』
- 『夜行観覧車』
- 『カケラ』
- 『未来』
1冊ずつ、魅力をたっぷりお伝えしていきますよ。
『告白』
まずは2008年に発表された衝撃のデビュー作『告白』です。
簡単に説明すると、勤務先の中学校で娘を亡くした女性教師とその生徒たちをめぐるミステリーです。
「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」
この衝撃的なセリフから始まります。
娘を殺した犯人に復讐するというストーリーで、しかもそれは自分が担任をしている生徒なのです。
- 級友
- 犯人
- 犯人の家族
上記の視点で、語り手が次々と変わり、真相が明らかになっていく構成です。
ちなみに、本作は2010年に松たか子主演で映画化されましたが、内容が過激なためにR15指定作品になっています。
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『贖罪』
次にご紹介するのは、2009年に発表された『贖罪』です。
タイトルからして不穏ですよね?
15年前、静かな田舎町で一人の女児が殺害されて、その事件当時一緒に遊んでいた女の子四人の人生に不幸が降りかかる。という暗いストーリーです。
ある日、静かな田舎町で一人の女児が暴行されて殺害されます。
女児の第一発見者であり直前まで遊んでいた四人の女の子達は犯人と思われる男に会ったような気がするものの、なぜだか顔が思い出せず事件は迷宮入りしてしまいます。
そして娘を亡くした母親は彼女たちを家に呼び出し、唐突に言い放つのです。
あなた達を絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、私が納得できる償いをしなさい。
『贖罪』双葉文庫
小学生の女の子が友達が殺害された現場にでくわしただけではなく、母親からそんな言葉を言われたら、その経験は一生のトラウマになると思いませんか?
たまたま被害者の女の子と遊んでいて、たまたま犯人の顔を見てしまったばかりに・・。
それだけのことで、四人の少女達は十字架を背負って生きていくことになるのです。
以降の各章では大人の女性に成長した15年後の四人の姿が描かれていきます。
それぞれ結婚していたり望んだ仕事をしていたり、それなりに生きているけど、幼い頃の罪の意識を抱えたまま生きてきた彼女達の不幸な人生は可哀想すぎます。
それぞれのエピソードは辛くて、恐ろしい結末のものが多いです。
本作は連続ドラマWでドラマ化されました。
『夜行観覧車』
次にご紹介するのは、2010年発表の「夜行観覧車」という作品です。
坂の下の街を見下ろす高台の高級住宅地、ひばりヶ丘に住むエリート一家で突如起きたセンセーショナルな殺人事件。
父親が被害者で、母親が加害者という噂が立ち、世間はざわつきます。
遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。
その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになっていきます。
昼ドラみたいな設定で、主婦が好きそうなストーリーと勝手に思っています。
高級住宅地で起きた事件について、近所の三つの家族の視点から描かれて、それぞれの家族の秘めごとが少しずつ明らかになっていきます。
特に遠藤家という一家の中学生の娘・彩香のキャラクターがすごく個性的です。
癇癪がものすごくひどくて、言葉遣いはひどいし、物は投げ付けまくるし、強烈・・!
この作品はドラマ化されたんだけど、てこの癇癪娘を杉咲花が演じてかなり怪演と話題でした。
坂道を転がり落ちないように、必死でバランスを保ちながら踏ん張っているうちに、自分自身が歪んでしまっていたのだ。
『夜行観覧車』双葉文庫
特に、上記の言葉が印象的でした。
誰もが羨みそうな坂の上にそびえ立つ高級住宅地だけど、これを読んで改めて思うのは、やっぱり他の家族のことなんて何にも分からないんだな、ということ。
どんなに幸せで完璧そうに見えても、どんな悩みを抱えているのかなんて当人達にしか分からない…。
坂を上りながら、下りながら、家族それぞれの想いが交差している感じがすごく切なかったです。
「隣の芝は青く見える」と言うように、他の家族のことなんてわからないものですよね。
この作品はイヤミスでもあるけど、家族がテーマにもなっていて、色々考えさせられるはずです。
『カケラ』
次に紹介するのは2020年に発表された『カケラ』という作品です。
美容整形をテーマにした物語で、容姿をめぐる固定観念をあぶりだす心理ミステリーでもあります。
田舎町に住む女の子が、大量のドーナツに囲まれて自殺したらしい。という噂が流れます。
モデルみたいな美少女だとか、学校一のデブだったとかその噂で世間がざわつくのです。
ドーナツに囲まれて死んじゃったって、一体どんな状況なの?
意味不明の始まりで面白いですよね。
とある美容クリニックに勤める医師の久乃は、ある日、故郷の同級生・八重子の娘が亡くなったことを知ります。
その娘というのが、先に紹介したドーナツに囲まれて死んだと噂の少女でした。
母の作るドーナツが大好物で、性格の明るい人気者だったと言うこと。
湊さんの十八番ともいえる、インタビュー形式でストーリーは進んでいきます。
亡くなった少女の同級生、担任、身内などが登場していきますよ。
読み始めは、少し淡々としているんだが、登場人物が増えていき、人間関係が少しずつ繋がっていくと一気に面白くっていきます。
そして、少女はなぜ亡くなったのか?の考察が始まり、ドーナツについての意味も分かっていきますよ。
見た目の善し悪しなんて見る人によって微妙に違ったりするし、本人がそれを実際どう思ってるかなんて本人にしか分からないこと。
周りが善意と思ってする言動が本人にとって幸せなのか、不幸なのか…。自分の尺度で勝手なことを言う怖さ…。
自分のコンプレックスなんて他人にはわからないものですよね。
見た目についてが大きなテーマになっている作品なので、女性は特に共感できる描写が多いかもしれません。
『未来』
最後に、またパンチの強いイヤミス作品をご紹介します。
湊かなえが作家デビュー10年目の2018年に発売した「未来」という作品です。
「未来」って聞くと明るい物語に感じてしまうけれど、さすがは湊かなえさん。
明るく爽やかな話で・・あるわけない!
この作品はファンの間でも、初期の頃の作品に近い衝撃があったとかなり話題になったんですよ。
初期の作品である『告白』『贖罪』などの重いストーリーの作品があまりにも衝撃的だったために、その後の作品は少し物足りなくなってきたとの声がありましたが・・。
実は、私もその1人でした。。(小声)
そんな頃のデビュー10年目に発表された本作を読み、やっぱり湊かなえはすごい!と実感しました!
では早速、あらすじを説明していきますよ。
主人公は10歳の章子。20年後の私、つまり30歳の章子から手紙が届きます。
こんにちは、章子。私は20年後のあなた30歳の章子です。あなたはきっと、これはだれかのイタズラではないかと思っているはず。だけど、これは本物の未来からの手紙なのです。
『未来』
湊かなえさんらしくない始まり方だし、なんだかファンタジーみたいですよね。
未来からの手紙に関しては少しずつ明かされるとして、この作品は主人公の章子をはじめ、家にも学校にも居場所がない追い詰められた子供達の生活がリアルに描かれている物語。
この作品は、貧困問題、児童虐待、いじめなど、現代の社会問題のリアルがテーマになっているんです。
児童虐待の描写は読んでいてとても辛いし、不幸な子供達が可哀想で仕方ないが、現実にも同じような子供達がいるのだと考えさせられます。
湊かなえさんが、社会問題に真正面から向き合った気合が伝わってきました。
あとがきの中の以下の言葉が印象的でした。
本書を読んでくださった方の数だけ、壁に杭を打ち込むことができればいい。傷くらいつけられるのではないか。と思って書いた。
『未来』あとがき
映像化されている作品が多いから、映像から入るのもオススメ!
湊かなえ作品は映像化されている作品が多いから、いきなり小説からは…という人は
ドラマや映画を観るのもオススメです。
中でもドラマで完成度が高いと評判だった作品は以下の3つです。
- 『リバース』
- 『Nのために』
- 『夜行観覧車』
映画でオススメの作品は以下の2つです。
- 『告白』
- 『白ゆき姫殺人事件』
湊かなえはどんな人にオススメ?
湊かなえさんの作品は、以下のような人にオススメです。
- 普通のミステリーでは物足りない人
- 人間の闇を見たい人
- 女同士のドロドロした部分を見たい人
おわりに
今回は、イヤミスの女王・湊かなえさんのご紹介をしてきました。
そもそもイヤミスって好き嫌いがかなりハッキリ分かれそうなジャンルではあります。
女のイヤな部分を、これでもかと描かれることが多いからです。
でも、一度読んだらイヤミスの女王・湊かなえの魅力にどっぷりハマってしまうはず!
ぜひ、参考にしてみて下さいね!
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